死の幇助

 死の幇助(しのほうじょ)とは自殺を手助けする行為を指す。その動機及び態様により、消極的幇助と積極的幇助に分かれる。切腹等で介錯を行うのもこの一例である。

 消極的幇助とは回復の見込みのない患者に対し、それ以上の延命措置を打ち切ることを指す。改善の見込みのない苦痛よりも死を選択するとの意味から、尊厳死とも呼ばれる。医師が酸素マスクを外すなどの行為を行うが、日本の現行法では殺人罪に問われる。

 積極的幇助とは自殺志願者に対し、苦痛のない自殺手段を提供することを指す。アメリカ・ミシガン州在住の、ジャック・ケボキアンが考案した自殺装置が有名。ケボキアンが考案した自殺装置は、タナトロン(Thanatron)とマーシトロン(Mercitron)の二つがある。最初に作られたのはタナトロンである。この二つはしばしば混同されるが、薬物を利用するものはタナトロンである。

 タナトロンはギリシャ語で「死の機械」という意味である。これは30ドル程度のガラクタを利用して作られた。タナトロンは、以下のプロセスで患者を死に至らしめる。

 1.まず、患者に点滴装置を取り付け、生理食塩水の点滴を始める。
 2.患者がスイッチを押すと、一分後にチオペンタールの点滴が始まる。
 3.患者がチオペンタールによって昏睡状態に陥った後、塩化カリウムの点滴が始まる。
 4.最終的に、患者は心臓発作によって死亡する。

 タナトロンによって、二人の患者が死亡した。この後、ケボキアンはミシガン州により医師免許を剥奪されたため、薬物の入手ができなくなり、その後の自殺幇助はマーシトロンによって行われた。

 マーシトロンはギリシャ語で「慈悲の機械」と言う意味である。これは一酸化炭素中毒を利用して、死に至らしめるものである。一酸化炭素が入ったシリンダに接続された、マスクを患者にかぶせる方法で、バルブを開くことによって一酸化炭素が吸入されるものである。

 ミシガン州に自殺幇助罪がなかったことから、この行為が可能となったが、事件を契機に、ミシガン州当局は慌てて自殺幇助罪を制定。ケボキアンが自殺装置を続けて使用したことから、ケボキアンは自殺幇助罪で告訴されたが、ケボキアンは自殺装置の使用をやめるつもりはないと明言している。

 ケボキアンの下には、自殺装置の利用を求める連絡が、全世界から寄せられている。しかし、ケボキアンは自殺装置の使用を病気で苦しんでいる者に限定している。

 オランダでは、条件付で自殺幇助を合法化した。オランダでは、自由に医師を選択することが出来ず、生まれたときからホームドクターがあてがわれる。ホームドクターが、回復の見込みがなく、生きていても病苦にさいなまれるだけだと判断した場合には、致死量に達した毒薬の使用が許される。


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