もう一つの天国の階段

~最愛の人の死から7年、ソンジュが出会った愛と奇跡と再会の物語~

店内に切なく、美しいショパンの曲が流れていた。

女性客がウエイタ−を呼んで囁くように呟いた。

「あの今、演奏している人は新しく入ったピアニスト?」

誰もが耳を傾けずにはいられない美しい演奏だった。

「いいえ、あの方は私どもの店に良くいらっしゃるお客様で、時々、自らなさるんですよ」

ウェイタ−は、丁寧に答えて一礼すると奥に姿を消した。

女性はピアノの前に座っている男性にもう一度視線を注いだ。
無名のピアニストにしては、容姿といい、気品といい、その場にそぐわない感がしない訳でもなかった。
外見から放つ色香、どこか貴族的風貌。
気にしない様にしても知らないうちに心が彼の方に向いてしまう。

人を魅了する何かが漂う男性…。
魂を奪われた様にぼんやりと見とれていた女性は、自分でも気付かないうちに溜息を漏らしていた。
そんな女性の向かい側にいつの間にか座り込んだ男性は、グラスをクルクル回しながら、気に食わない表情で言葉を放った。

「あのさ、さっきから、俺のグラス空なんだけど?」

「あれっ!?、いつの間に来てたの?」

「いつの間にって… 愛しの彼が来たのも目に入らないっていうのは、チョットと酷いんじゃない?」

「ごめん… ねぇ。見て、あのピアニスト…。
本当に素敵なのよ。ピアノの腕も並大抵じゃないし。
一体、どこの誰なのかしらね…。ねぇ、気にならない?」


「男に興味持ったって仕方がないでしょう。
それより、今日は僕達にとって何の日かって覚えてる?
そっちの方が重要なんじゃないの?」


「…どことなく憂いを秘めた悲しそうな顔ね…
ほら、見てみて…あの人どこを見ているんだろう。
何だか遠くを見てる感じなんだけど…」


女性は自分の恋人が不機嫌そうなのを気に留める様子もなく、ピアノの前の男性に釘付けになっていた。

「本当に誰だか知らないの?
あの有名なグローバルグループの後継者チャ・ソンジュじゃないか」


「えっ、本当…? どうりで何処かで見た顔だと思ったわ」

女性は目をパチクリさせながら、叫びそうになるのを押し殺す様に慌てて、手を口で覆った。

超有名スターに出会って、すっかり舞い上がってしまった10代の少女のような彼女を尻目に全く気に食わない素振りで彼が言った。

「昔から新聞を賑わせて来た人物じゃないか。
あんな有名人も見分けが付かないなんて…ったく。
だから、普段から新聞くらい目を通しておけって言ってるじゃないか。ネットだってあるんだし。
ネットばかりやってるから、世の中の事に疎いんだよ…」


「やだ…どうしよう… 今ここに私の目の前にいるの…
本当にあの有名なチャ・ソンジュなの…?
しかもピアノを弾いてくれて…」


「まったく…。 ゙弾いてくれでって…、君の為に弾いてる訳じゃないだろう?
今、大事なのは君の前に座っている僕!!」


彼女が有頂天になってソワソワとしている間に演奏は終わった。

ソンジュは、あちこちから送られて来るアンコールの拍手にも答えずに静かに立ち上がる。
そして、チャン理事の待つテ−ブルへと戻って行った。

チャン理事の前に置かれたグラスの酒は少しも減っていなかった。

「今日の演奏は、どうだった?」

ソンジュは、自信有りげにニッコリ微笑みながら、豪快に腰掛けた。

「いつも通りですよ」

チャン理事は優しい声で短く答えただけだった。

ソンジュは、初めから賞賛される事など期待していなかったという様に組んだ足をブラブラさせながら周囲を見回した。

「社長が演奏されている間、私は女性客を眺めていましたよ」

ソンジュは肩をすくませながら、ニヤッと笑った。
「いつも通りにね」

「みんな、社長に見とれていましたよ」

「そりゃ、そうだよ。僕みたいにハンサムで素敵なピアニストには、ちょっとやそっとじゃ、お目に掛かれないだろうからね」

ソンジュはチャン理事と冗談を交わしながら、指を鳴らしてウエイタ−を呼んだ。

「車を回してくれ」

「チャ社長、忘れて下さい…とは言いません。
忘れられない位に大切で美しい愛だった事は良く解ります。
側に居る私にも、痛いほど伝わります。
でも…このままでは、余りにも、おいたわしくて見ていられません」


ウエイタ−の姿が見えなくなった途端、チャン理事は、今まで心に溜めていた事を一拳に吐き出した。
ソンジュは顔を背けたまま黙って聞いていた。

「また、その話ですか…。
僕には、もう他の人に分けてあげられる心は残っていないんですよ。今でも…そしてこれからも。
チョンソの思い出で僕の心は塞がっているんです。
他の人が入って来る隙間はありません」


椅子から立ち上がるソンジュの表情は冷たかった。
チョン理事は、彼に聞こえない様に溜息を付き、先に出た彼の後に付いてバ−を出た。

チャン理事は。ソンジュの家に向けて車を走らせて、ソウルの道はスピードを上げて走る車のライトで華やかに彩られていた。

ソンジュは後部座席の窓ガラスに斜めにもたれ掛かり、無数に通り過ぎるライトを眺めていた。
暗い窓ガラスを背景に明るく笑うチョンソの顔がぼんやりと浮かんで来るようだったが、チョンソがいないソウルは余りにも寂しかった。

「ハン・チョンソ…」

ソンジュは低い声でチョンソの名前を呼んだ。
心を込めて、舌の奥で言葉1つ1つを噛み締める様にソンジュはも、う一度、彼女の名前を呼んだ。

「ハン・チョンソ…」

嘘のように涙が溢れ出て来て、ゆっくりと熱い涙が頬を伝った。
今でも余りに悲しい名前だった。
ソンジュは、チョンソが逝って、もう7年が経つという事実が信じられなかった。

今でもハッキリ彼女の顔が目に浮かぶのに…。

『チョンソ』という名前がこんなにも胸を苦しくさせるというのに…。

ソンジュは、自分の胸の中で、ゆっくりと息を引き取って行くチョンソの感触を今でもハッキリと覚えていた。

目を閉じると手の平には、チョンソのなだらかな細い肩からのラインと体温がそのまま伝わり背中には彼女の身体の重みが伝わった。

チョンソは天国に旅立ちながら、『愛はこれから始まるの』と言ったけれど、チョンソが隣にいない現実は、ソンジュにとって余りに辛い愛だった。

「おやすみなさい。それでは明日の朝」

家の前に到着したチョン理事は車から降りて、ソンジュの肩を1度固く掴んでからそっと離した。
ソンジュは何もなかったかの様に手を振り家の中へと入って行った。

今日に限って、チャン理事が新しい出会いについて語った理由をソンジュは知っていた。
母のミン会長が準備した見合いは既に10回も越えて、今日も見合いの席に出席出来なかったのだ。

「一体、いつまで死んだチョンソにしがみ付いてる気なの?
人生は貴方自身のものかも知れないけれど、貴方の置かれている立場は個人である前にグローバルグループの社長であるという事を自覚すべきでしょ。
今の貴方の姿を見てチョンソが喜ぶと思うの?」


ミン会長は折角、段取りした見合いの席がまたも一方的なソンジュの思いでキャンセルになってしまった事について、怒りを押し殺しながらたしなめた。

「…私が何を1番、後悔しているか、お分かりですか?」

ミン会長は押し黙ったまま、ソンジュに目を向けた。

「チョンソと一緒に死ななかった事です。
彼女がいなければ、愛もありません。
私の愛は世界にたった1つ… 彼女との愛だけなんです」


ソンジュは、哀願するかのように母に向かって言い放つ。
すると、直ぐにチャン理事と会社を出た。
そして、行き付けのホテルのバ−へと向かったのだった。

ソンジュは、チャン理事が自分を親友のように心配してくれている事も知っていた。

以前、チョンソの遺骨のある納骨堂へ行った帰り、沈んでいるソンジュにチョン理事は話し掛けた。

「私が大学生の時、美しいドイツ人と知り合って、直ぐ付き合い始めたのですが、別れも直ぐににやって来ました。
今、振り返ってみると、私達は滑らかな道を自転車で急いで駆け抜けたような気がします。
周りの風景も私達を取り囲む人々も、何1つ見ていませんでした。
私達には、お互い心を痛める事もなかった反面、思い出す程の物もさほど残っていません。
険しい山ほど、思い出に残るというでしょう。
真実の愛であるほど、平坦な道のりではないという事では、ないでしょうか」


「慰めてくれて有難う」

静かに座っていたソンジュが答えた。

「僕たちは険しい道のりを遠回りして、愛を確かめ合った。
でも今は、それさえも後悔している。
どうして、あんなに馬鹿みたいな事をしていたのか分からない。
僕たちの登った道は、本当にデコボコで険しくて狭かった。
それでも、僕たちは登ったんだ。
でも降りて来る道は、僕1人だけだった。
出発するまでは降りて行く勇気があったのに、降りて行く度に下がってドンドン苦しくなって来る。
登り道よりも楽な筈なのに何倍も息苦しくて辛い。
自分の中に愛さえあれば、1人でも生きて行けると思ったけど、違っていた…」


チャン理事がソンジュの肩に一方の手を乗せて撫で下ろした。
彼の大きくて信頼出来る手から温かさが伝わった。

「辛くて、狂いそうだよ…」

しかし、チャン理事の優しさもソンジュの心の奥底の悲しみを打ち消す事は出来なかった。

ソンジュは、チョンソと共に短い結婚生活を過ごした家で今も一人で暮らしていた。
家の中は7年前と少しも変わっていなかった。
流行遅れの家具と電化製品の一部にはガタがきていたが、全てがチョンソとの思い出が詰まった空間だ。

水を飲みにキッチンに向かったソンジュの目に止まったのは、主人を失った、あのト−スタ−だった。

7年前に百貨店の家庭電化製品売り場で、チョンソと二人でト−スタ−買おうと真剣に選んでいた。

「これがいいわ!」

「ダメ!ダメ!僕はパンは嫌いなんだよ。
ご飯が好きなんだよ!!」


「そう…、だったら、ソンジュお兄ちゃん毎朝、早起きするの大変だと思うけど…」

「僕が何で…?」

「食事当番は、お兄ちゃんがするんだから!」

「えっ…!?」

「じゃ、なかったら… 掃除当番にする?」

「オイ!そういう事は女がする事だろ?」

「結婚したんだから、何でも半分ずつ分担しなきゃ!それでこそ、公平でしょ?」

「でも僕は、お金を稼いで来るよ」

「だったら、私だって再就職するわよ」

「そりゃ、いいね!24時間一緒に居られるし、僕は賛成!!」

他のコ−ナ−に行こうとしたチョンソは思い立って、足を止めた。

「そうだ!折角だし、来たついでにテファお兄ちゃんのも買おう!」

「………」

「急いで行ったから、きっと何も準備していないわよ」

アレコレ選びながら、炊飯器売場の前で立ち止まったチョンソは、白い小さな炊飯器を手にとった。

「これフランスには絶対ないでしょう。これ幾らですか?」

いたたまれなくなったソンジュは、思わずチョンソの手を掴んで店員の目を気にしながら、その場から離れて言った。

「チョンソ!買うな!」

「どうして…!?」

チョンソが不満そうに言う。

ソンジュはテファが亡くなった事が言い出せず言葉に詰まった。

「妬いてるんでしょ?」

チョンソは悪戯っぽい表情でソンジュの顔を覗き込んだ。

「…そ、そうだ。 だったら、どうなんだ?」

ソンジュはチョンソに強張った表情を見せまいと横を向いた。

「友達なんでしょ?最低ね…」

「そうだ最低だ!だから、これからはテファさんには何もするな!」

「…?本当に怒ったの?冗談でしょ…?」

ソンジュは返事もせず、チョンソの手を引いて行く。

「あっ…!!」

こめかみを押さえて立ち止まるチョンソ。
その姿に急に心配になったソンジュが声を掛ける。

「どうした!?痛いのか!?」

チョンソは笑いながらペロッと舌を出す。

「ううん、全然!!」

ケロッとした顔で言ったチョンソのおでこをソンジュは、コツンとこずいた。

ソンジュは、ポツンと寂しげにト−スタ−のタイマ−を回してみた。

「チョンソ… 僕はパンは嫌いなんだよ。ご飯が好きなんだ…」

チョンソのいない7年間…、ソンジュは狂ったようにグローバルグループの二代目として、業務をこなしながら、テファ財団の福祉活動の代表も兼任していた。

ソンジュはス−ツを投げ捨て、ベッド脇にあった箱を掴んだ。
それは、ソンジュが『チョンソの箱』と、名付けた1番の宝物。
ソンシュの命より大切な思い出の品だった。

ソンジュは、箱の中から1つ1つ思い出の品を取り出す。
そして、チョンソへの思いにふけっては寝付く様な毎日を送っていた。

海辺で一緒に写したポラロイド写真は、何回も何十回も数え切れない位に取り出して、見ていたのでボロボロになっていた。

ウェディングドレスを着て、眩しそうに笑うチョンソとの結婚写真は、眺めのいいリビングでの時の流れと共に今では、パステル画のように色褪せていた。
それはまるで、チョンソが自分の目の前から、少しずつ薄れて消え去って行くのを、ただ手をこまねいて、眺めている様でソンジュの心は疼いた。

ソンジュは箱の中から、チョンソからプレゼントされた赤い手編みの帽子に顔を埋めて、深く息を吸い込んだ。
1本1本の糸の合間にチョンソの匂いが微かに残っている様だった…。

チョンソとの幸せだった時間が走馬灯の様にソンジュの頭の中をかすめて行った。
そして、チョンソが苦痛の中で流した涙もハッキリと甦って来た。

「チスがチョンソだという事が、どうして直ぐ判らなかったんだろう。
いや、その前にチョンソが交通事故で死んだという事をどうして簡単に信じてしまったんだろう。
チョンソを残して、留学するんじゃなかった…。
一緒に行けないと判った時点で諦めれば良かったんだ。
そうすれば、チョンソがあんなに苦しまずに済んだのに…。
そうすれば、死ななかったかも知れないのに…」


ソンジュは、チョンソの箱を開けたまま、赤い毛糸の帽子を握り締めて、ベッドに横たわった。
そして、ソンジュの頬を涙が伝い、枕を濡らしていた…。

「ハン・チョンソ… 会いたい… 会いたい…」

ソンジュは、夢の中でチョンソに会える事をただひたすら、願いながら、瞳を閉じた…。

《チョンソ… どうすればいいんだろう。
僕が幸せになる事をチョンソが1番望んでいるはすなのに…。
僕は苦しみの呪縛から抜け切れない…。
何処に行っても、チョンソが見えるんだ。
誰を見ても、チョンソの面影をずっと探している。
チョンソは、愛だけのある天国にいて…。
僕は此処に…、この孤独をどうすれば乗り越えられるんだろう…。
神様は許してくれないだろうね。
チョンソに会いたい…もう1度…》

「社長、デパートの経営陣、上半期決算会議が間もなく開始されます」

インターホンを通して、女性秘書の事務的な声が聞こえた。

「分かりました。直ぐに行きます」

ソンジュは幾つかの書類をチェックした後、既に立って準備しているチャン理事と目配せして、社長室を後にした。

チャン理事は、朝の簡単な挨拶をしただけで、今まで一言も言葉を発していなかった。
ソンジュに沈黙が必要な時が有る事をチャン理事は良く知っていた。

会議室には、デパート12支部の経営を任されている12人の経営陣、全員とミン会長が座っていた。
ソンジュが入室すると経営陣たちは姿勢を正した。

ミン会長は昨日の怒りがまだ収まっていないのか、ソンジュを見ようとしなかった。

会議は直ぐに始められて、各支店の上半期販売実績と下半期販売予測、ライバル社の分析、マ−ケティング戦略などが続いた。
大型規模のデパートの1つである明洞(ミョンドン)支店のユン社長の報告に社長全員が注目した。

殆ど閉店寸前まで陥っていた明洞支店は、1年前から持ち直して、ユン社長が新しく赴任してからは、販売実績が急上昇していたのだった。

明洞支店は、ソンジュが特に気に掛けていた支店でもある。
その明洞支店が起死回生したのには、ユン社長の力によるところが大きかった。

「…それで、私どものデパートは更にブランド館を拡張して、新人デザイナ−ブ−スを特設しました。
毎月、消費者の投票結果を集計し、下半期には、優秀デザイナ−の作品を我が社のオリジナルブランドとして契約し、常設ブ−スを設ける予定です。
また、地下の食料品売場には、有機農食品の農家指定栽培を図り、消費者が生産者の顔を確認出来る事で消費者の信頼度を得るなど、お客様のニ−ズに積極的に応えて参りました。
デパートの印象が高級でありながらも、親しみ易いイメージへと確実に定着して来ており、これからの要因が販売実績の急上昇に繋がったものと思われます」


明洞支店は、運営難に陥っている幾つかの支店の良いモデルになるだろうと、一同、期待感で胸を膨らませてユン社長が報告した。

会議後にソンジュは、ユン社長と握手を交わした。
そして、慰労するとユン社長は、控えめに微笑みながら答えた。

「1人では、とても出来ませんでした。
今度の特別企画の写真展は、ハン・ユリ、キュレ−タ−の力によるところが大きいんです」


ソンジュはユン社長に向かって苦笑いした後に会議室を出た。

『ハン・ユリを必ず、会社に復帰させて』という、チョンソの遺言がなければ、ソンジュは再びユリに会う事はなかっただろう。
しかし、チョンソも許したハン・ユリを憎む理由は、今はもうソンジュにも無かった。

「チョンソは僕に人を愛する心を教えてくれたというのに…
どうして、時が経てば経つ程、僕の心は苦痛ばかりになって行くのだろう…。
僕は今、チョンソに対する、済まない気持ちをユリに何かしてやる事で、償おうとしているのだろうか…」


真剣に考えながら歩いていたソンジュは、いつの間にか遊園地の中に入っていた。

『悲しみもなく別れもない…、そんな世界… 天国…。』

チョンソと自分の置かれている世界を考えながら、歩いていたソンジュは気付くと壁画の前にいた。

今では、テファの遺作となった『天国』の壁画に足を運ぶのが毎日の日課になっていた。
ソンジュにとっては、チョンソの祭壇のような場所でもあった。

ソンジュは回転木馬の前で立ち止まった。

子供達とその親達が木馬に乗って、楽しそうに笑っていた。
チョンソが良く乗っていた白馬の上には、小さな子供が座って、小さい手を懸命に振っていた。

ソンジュは壁画の前をゆっくりと歩いて行った。
ソンジュは、『天国』の前に着いた時、ハンマーで頭を殴られたように驚いて、その場に立ち尽くした…。

ある女子学生が壁画の前で静かに涙を流していたのだ。
夏の制服を着て、立っている女子学生の姿は、遠い昔、16歳の頃のチョンソに驚く程そっくりだった。

ソンジュは少女が眼に入った瞬間、自分が18歳の少年になったような妙な気分に陥った。

急に時間が逆戻りして、1人でアメリカに留学に行く前にチョンソと約束した、遠い、あの日が甦って来た…。
まるで、過去に戻ったようだった。

少女は自分を食い入るように見つめるソンジュの視線を感じたのか、急に振り返りると見つめ返した。

その少女の顔が恥ずかしさでほてった。
少女は走り去ろうとする。
と、その瞬間、ソンジュは呼び止めずにはいられず、少女を呼び止めた。

幸い、少女は逃げなかった。

「どうして、泣いているの?」

ソンジュは不自然に笑い掛けながら、少女に近づいて言った。

「ゴメン… 驚かせてしまって…すまない」

チョンソに瓜二つの少女の登場という予期せぬ出来事にソンジュは動転していた。

「……、……」

少女は自分が泣いていたと言われて驚いたようだった。
正確に言うと、心の中で流していた涙を表には出さず、我慢していたという事がどうして、彼に分かったのか…が、不思議だった。
少女は実際に涙を流して、泣いてはいなかったのだ。
少女の瞳には驚きの色が走った。

「おじさんもあの絵を見て、良く泣くんだ。
恥ずかしい事じゃないさ」


少女が恥ずかしがって、何も言えないと感じたソンジュは、彼女の緊張を解こうと言葉を続けた。

「実は、あの壁画… おじさんにとって、とっても大切なものなんだ。
おじさんの初恋の人の為に描いて貰った、ものなんだよ。
おじさんはね、初恋の人に『天国』をプレゼントしたかったんだよ」


ソンジュは少女に向けて、優しく暖かい笑顔を浮かばせて見せた。

「ちょっと話がしたい…」

そう言い掛けて、少女と何の話をするつもりなのか、ソンジュ自身も混乱した。

「誤解しないで。 下心があって言ってるんじゃないんだ。
正直、言って10代の少女は僕のタイプじゃない。
いや、まあ、これは冗談だけど。
そんなにじっと見ないでくれよ。
本当の事を言うと、僕の知ってる人に君がとても良く似ているんだ。
そっくり、そのまま、瓜二つ。
少しだけで良いから、僕に時間をくれないかな?
広場にオ−プンカフェがあるんだけど、そこはどう?
あそこなら大丈夫!僕には、これっぽっちもやましい所はないんだよ。
僕が信じられない?」


少女は眉間にシワを寄せて、ソンジュの顔を疑わしそうにしげしげと見た。
不安になるとおでこにシワが寄るところまで、チョンソに似ていた。

「ジス…!ユン・ジス!
何、グズグズしてるの?早く!先生が呼んでるよー!」


少女の同級生たちの声がした。

「あッ」と、言ったきり、少女はソンジュの前から素早く消えてしまった。

1人残されたソンジュは、少女が同級生たちと一緒に天国の壁画から、次の場所に移動する後ろ姿を呆然と見守っているだけだった。

「ジス?ユン・ジス…」

少女の名前は、チョンソのもう1つの名前だった。

ソンジュは息が止まりそうになっていた。
少女の名前がソンジュの中で波紋のように広がった…。

その日の夜、ジスは家で普段と同じように家政婦と二人っきりの食事を済ませて、自分の部屋に戻った。
遊園地の人混みや転校して間もないクラスメイトにまだ馴染めない緊張感で普段よりも早くベッドに横たわった。

「あのおじさんは、どうして、私が泣いているのを分かったのかしら…」

学校の遠足で遊園地に出掛けて、偶然に壁画の前に着いた時、ジスの眼は釘付けになった。

雲の上の創造主。そして、遥か遠くでキラキラ光る太陽の光を浴びながら、建っている家…
それは『天国』、苦しみも悲しみも、寂しさも別れもない、天国をジスは夢見ていた。

けれどジスにとって、天国は手の届かない遠い所にある幻に過ぎなかった。
『天国』という名の壁画の前で、心の中で泣いていたのは、その為だったのだ。

疲れ過ぎたせいか、神経が敏感になっているのか、なかなか寝付かれなかったジスは、アレコレと頭の中に今日の出来事が目まぐるしく、回り始めた頃に眠りに落ちた。

「ねぇねぇ!あの人、新しく来た先生かな?」

「どこ、どこ?」

「ほら、黒い車の前に立ってる人よ」

「わっ!格好いい!!どうなってんの!」

「めちゃ格好いい!!こっちを見てよ!」


女子学生達が先を競って、窓ガラスから身を乗り出して、同じ方向を指差しながら騒いでいた。
ジスの耳に女の子達が大声で話しているのが四方から聞こえていた。

「ジス!早く来て、見ないと後悔するって!!」

ジスはクラスメイトに呼ばれるがまま、目を擦りながら、窓際に近付いた。
ジスが窓際いっぱいに張り付いている女子学生の隙間から分け入って見ると、運動場の隅に黒いリムジンが止まっていた。

そのリムジンの前には、長身の外国人と教頭先生。
そして、チャ・ソンジが立ち話をしていた。

「あっ!!昨日のおじさん…」

ジスの独り言に友達のユジンが目を丸くした。

「えッ!ジス、あの人知っているの!?」

「誰?誰!?、ジスの知り合い!?」


あっという間に皆の視線がジスに集まって、少女達は悲鳴を上げながら、ジスをけしかけた。

「ユン・ジス!担任の先生が終礼に出なくていいから、今直ぐ鞄を持って帰れって」

担任の先生にサインを貰いに行っていたクラス委員長が息を切らせながら駆けて来てジスに伝えた。

「なんで…?」

ジスはびっくりしながらも気持ちを落ち着かせて、鞄をまとめながら内心ソンジュと関係ある気がした。

「どういう事?」

クラスメイトが興味深そうにジスの顔を覗き込んで全員の目が光っていた。

ジスが運動場のソンジュに向かって走って行くと教頭は車のドアを開けてジスを誘導した。
ジスはチャン理事が運転する車の後部座席でソンジュの隣に座った。

何が何だか分からないジスはただ呆気にとられている。
ソンジュは口元に軽くエクボを浮かばせてジスを横目でチラッと見た。

「どうして私の学校に来たんですか?」

「簡単な事だよ。2年生のユン・ジスという学生とデ−トがしたいと言ったのさ」

「からかわないで下さい」

「これは本当の話だけど、僕はジスが通っている学校に少しばかり寄付をしてるんだよ」

ソンジュは息が止まりそうになって、少女の名前がソンジュの中で波紋のように広がった。

その日の夜、ジスは家で普段と同じように家政婦と二人っきりの食事を済ませて自分の部屋に戻った。
遊園地の人混みや転校して間もないクラスメイトにまだ馴染めない緊張感で普段よりも早くベッドに横たわった。

「あのおじさんは、どうして私が泣いているのを分かったのかしら…」

学校の遠足で遊園地に出掛けて偶然に壁画の前に着いた時にジスの眼は釘付けになった。
雲の上の創造主。
そして遥か遠くでキラキラ光る太陽の光を浴びながら建っている家…
それは『天国』
苦しみも悲しみも寂しさも別れもない天国をジスは夢見ていた。

けれどジスにとって、天国は手の届かない遠い所にある幻に過ぎなかった。
『天国』という名の壁画の前で心の中で泣いていたのはその為だったのだ。

疲れ過ぎた為か神経が敏感になっているのか、なかなか寝付かれなかったジスはアレコレと頭の中に今日の出来事が目まぐるしく回り始めた頃に眠りに落ちた。

「ねぇねぇ!あの人新しく来た先生かな?」

「どこどこ?」

「ほら、黒い車の前に立ってる人よ」

「わっ!格好いい!!どうなってんの!」

「めちゃ格好いい!!こっちを見てよ!」


女子学生達が先を競って、窓ガラスから身を乗り出して同じ方向を指差しながら騒いでいた。
ジスの耳に女の子達が大声で話しているのが四方から聞こえていた。

「ジス!早く来て見ないと後悔するって!!」

ジスはクラスメイトに呼ばれるがままに目を擦りながら窓際に近付いた。
ジスが窓際いっぱいに張り付いている女子学生の隙間から分け入って見ると運動場の隅に黒いリムジンが止まっていた。
リムジンの前には長身の外国人と教頭先生。
そしてチャ・ソンジが立ち話をしていた。

「あっ!!昨日のおじさん…」

ジスの独り言に友達のユジンが目を丸くした。

「エッ!ジス、あの人知っているの!?」

「誰?誰!?ジスの知り合い!?」


あっという間に皆の視線がジスに集まって、少女達は悲鳴を上げながら、ジスをけしかけた。

「ユン・ジス!担任の先生が終礼に出なくていいから、今直ぐ、鞄を持って帰れって」

担任の先生にサインを貰いに行っていたクラス委員長が息を切らせながら駆けて来てジスに伝えた。

「なんで…?」

ジスはびっくりしながら、気持ちを落ち着かせて、鞄をまとめながら内心ソンジュと関係ある気がした。

「どういう事?」

クラスメイトが興味深そうにジスの顔を覗き込む、全員の目が光っていた。

ジスが運動場のソンジュに向かって走って行くと、教頭は車のドアを開けてジスを誘導した。
ジスはチャン理事が運転する車の後部座席でソンジュの隣に座った。

何が何だか分からないジスはただ呆気にとられている。
ソンジュは口元に軽くエクボを浮かばせて、ジスを横目でチラッと見た。

「どうして、私の学校に来たんですか?」

「簡単な事だよ。2年生のユン・ジスという学生とデ−トがしたいと言ったのさ」

「からかわないで下さい」

「これは本当の話だけど、僕はジスが通っている学校に少しばかり寄付をしてるんだよ」

今、ジスが通っている学校がチョンソの母校であったという事。
ソンジュがチョンソの母校に『チョンソ奨学金』を創設して、芸術的な才能がありそうな学生のうち1番経済的に厳しい学生の学費を援助して来たという事実も知るはずもない事だった。

「幾ら、そうだとしてもデ−トだと言ったのに学校側は何も言わなかったんですか?
うちの学校の先生は凄く厳しいのに信じられません」


ソンジュはいぶかしがっているジスの表情を見ると更に面白がって冗談を投げ掛けた。

「もっと綺麗な女学生はいっぱい居るのに^どうしてユン・ジスなんですか?^って云われたよ。
ところで、あれは本当なのかな?
ジス、君が学校でも有名な問題児なんだって?」


「私をからかうのは本当に止めて下さい!
私はこれ以上、人の好奇の眼に晒されたくないんです」


「あははっ、なーんだ、本当に問題児なんだね」

ソンジュは大声で笑い飛ばした。
ジスは涙が込み上げて来るのを必死で我慢した事で顔が真っ赤になっていた。
そんなジスの表情を見れば見る程、ソンジュの気持ちは高まるのだった。

ソンジュの笑い声にびっくりしたチャン理事はバックミラーで後部座席を見た。
ソンジュのこんな笑い声を聞くのは何年ぶりか分からず、チャン理事の口元から笑みが零れていた。
あの、か弱く平凡に見える女学生のジスが、ソンジュに魔法を掛けたかのようだった。

「ゴメン!おじさんが悪かった!謝る!
この通り… 機嫌を直して!」


ジスはソンジュの事は、『昨日、会った時も直感的に悪い人ではない』という思いがあった。
でも人前で目立ちたくないというのは、ジスの切実な願いだった。

「今日は土曜日だし、学校も早く終わったんだから、気分転換にドライブに付き合って欲しいんだけどなあ…」

「何処へ行くの?」

「う−ん?何処か空気の綺麗な所へ行って美味しい物を食べよう。
何でも食べたい物を遠慮しないで言ってごらん!
おじさんがお詫びの記しに御馳走するよ」


「でも、どうして、私に…?」

「まっ、それは、この後のお楽しみって事にしよう」

2人が何だかんだ言い合ってる間に、車は混雑した都心から抜けて、高速道路を走り始めていた。

澄み切った良い天気で、空は青く晴れ渡って、水田の横には緑色の野原が広がっていた。
郊外の自然を目の当たりにして、ジスの強張った顔と緊張感が少しずつ緩み始めた。
そして、ジスの明るい陽気な微笑を見た瞬間にソンジュの心にも光が差した。

2人は道路脇にある花屋で百合の花を何本か買った。
その後、車を走らせて納骨堂へと向かった。

納骨堂の周りは静かでとても涼しい場所だった。
納骨堂に着くと、ソンジュも静かな表情に変わった。

チョンソの納骨箱は他の人とは別の離れた所にあった。
骨壷前には、写真とまだ供えられて、何日も経っていない花束が置かれていた。

ソンジュは、チョンソの写真の前にそっと百合の花を置いた。
ずっと黙っているソンジュにジスが口を開く。

「…このお姉さん、何処かで良く見た事があるような気がする」

「ジスに似てると思わないかい?」

「えっ?ああ…、うん。
このお姉さんがおじさんの初恋の人…」


ソンジュは微笑みながら頷いている。

「昨日、話していた天国の壁画…
この人が、おじさんの初恋の人…
お姉さんは亡くなったんですね」


「…亡くなった訳じゃない。暫く離れてるだけだ。
彼女は僕を待ってくれてるんだ。天国で」


ソンジュはそう答えようとしたが、結局、口を開かなかった。

写真の中のチョンソは、永遠に若く、そしてソンジュが生きている間、天国で会うまでは、音も無く笑っているだけなのだろう。

「私、お姉さんの為に祈るわ」

ジスは頭を下げて目を閉じた。

ソンジュも心の中でチョンソに話し掛けた。

「ハン・チョンソ…。 天国は良い所だろう。
そこには、悲しみも苦しみもないし…。
幸せかい…?僕がいなくても…?
いや…、天国から今も僕の事を見守ってくれてるんだよね。
僕が苦しまないようにしようとしても、ドンドン心が弱くなって行くんだ。
時々、チョンソの事が憎くなる時もある。
こんなに長く待たせるなら、どうして僕も一緒に連れて行ってくれなかったんだ…」


ジスが遺骨の前の写真と共に一つに重ねられて、置かれているペンダントを見た。

「ペンダントがあるわ。
おじさん、力を落とさないで。
お姉さんは、天使のような人だったのね。
この地球で長い間、生きるには余りにも心の綺麗な人だったのよ。
それで、天国から早く迎えが来たのだと思うわ。
だから、元気を出して」


それから、ソンジュは度々、この少女と会うようになって、少しずつ元気を取り戻して行った。

不思議な事にチョンソとそっくりな少女ジス。
ジスは昔、チョンソが住んでいた『海辺の家』に住んでいたのだった。
そして、チョンソと同じように心に深い傷を負っていた。

ソンジュは、久しぶりにチャン理事と飲みに出掛けた。
と、ソンシュは、その時、深く溜息を漏らして呟いた。

「チョンソから、どんなに大きな愛を贈られたのか忘れていたようだ。
チョンソの死に対する悲しみが段々、恨みとして残り、それが怒りに変わり、痛みになったんだ。
行き場のない恐ろしい位、寂しい気持ちになった。
一日でも早く、チョンソの後を追って死にたかった。
けれど、薄れていた感激をジスが呼び起こさせてくれた。
僕はジスに出会った事を偶然だと思っていないんだよ。
チョンソが天国から贈った、慰めだと思ってるんだ。
孤独から抜け出せるよう苦痛の為に。失われた愛の感情を元通りに出来るようにって…」


ジスは幼い頃、両親と共に脱北したが、逃げる途中で離れ離れになってしまい、今はユン社長に引き取られていたのだった。

ジスは絶望的な激しい銃撃戦の中で、『必ず会いに行くから』と言った父の言葉を信じて、両親を探し続けていた。
その事を知ったソンジュは、ジスの為に両親を探し始めた。

そして、ジスの父は既に亡くなっていた。
しかし、母のカン・ヒウンがフランスで画家として、活躍している事を知った。
そして、ソンジュはカン・ヒウンに会う為、休暇と称してフランスへと向かった。

ソンジュはパリに到着後、今は活動の場所をフランスに置いている、チョンソの父ハン教授の元へ向かい再会を交わした。

そして、ハン教授と共に3人でカン女史とホテルで夕食をとりながら、離れ離れになった娘ジスの話をした。

そして、ソンジュは、カン女史にエアーチケットを渡して、1週間後の再会を約束して、別れたのだった。

ソンジュはフランス滞在中、遊覧船でのフランス見物やワイナリーを巡って、ジスへのお土産も鞄に入っている事を確認した。

「ヨシッ!これでよし!
ジスの土産を忘れたなんて言ったら、口も聞いてくれないだろうからなあ」


ソンジュの心は青く澄み切っていた。
そして、ジスの元へ帰る為、レンタカーのエンジンを掛けて、シャルル・ド・ゴール空港へと向かった。

延々と続くブドウ畑を抜けて、ノルマンディーの海岸線に出た時、蛇行運転をする前方の車にソンジュは、クラクションを鳴らしながら、追い越しを駆けた。

相手は麻薬常習者で追い抜かれた瞬間、運転席にいる男がニヤリと笑ってデッドヒートが始まった。

キキキッー!、タイヤの擦れる音とエンジンの焼ける匂いをさせながら、ハンドルを左に切った瞬間、対向車線からトラックが現れた…。

車は正面衝突して、ソンジュの車はガードレールを破り、崖から海へ投げ出されて、静寂の中にいた…。

「…チョンソ…?チョンソが来てくれたんだね…」

空港の到着ゲートでは、定刻より早く着いたジスがソンジュの到着を待っていた。
しかし、ソンジュが乗っているはずの飛行機の案内板が消えた…。
結局、ジスはソンジュの姿を見つける事が出来なかった。

その時、何処から、『チョンソに似た綺麗な人を紹介するよ』
と言う、ソンジュの声が聞こえて来た。

その瞬間、中年女性の婦人がジスの方に向かって歩いて来る…。
そして、婦人はジスに声を掛けた。

「すみません。ひょっとして、チャ・ソンジュさんの…」

「はい…。チャ社長から聞いています」

「貴女… ジスなのね…」

その女性はジスをしっかりと抱きしめた。
ジスは女性の懐に顔を埋めて言った。

「…お母さんの匂いがする…」

遥か彼方でソンジュの声が響いた。

《愛は動くもの…。愛は戻ってくるもの…》

~FIN~




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