第9話 涙のシンデレラ

二次会のゲ−ムで酔ったソンジュはダンスフロアで踊るチスの元へ行きもたれ掛かった。

「そのままでいて…。
会いたいよ…
死ぬほど会いたい。
死んだら会えるのかな…
許してくれ…キム・ジス…
ごめんな、チョンソ…」

チョンソ以外の女性チスを愛している事に気付き、その気持ちに押し潰されそうになって泥酔してしまったソンジの思いだった。
曲が終わると同時にチスも我に返りソンジュから離れてテファの元へ向かおうとクラブを飛び出した。

チスが走り出た瞬間、またもユリの車に轢かれ掛けた事がキッカケでフラッシュバックが起こり、徐々に記憶が蘇る。

e自分が本当はハン・ジョンソである事
e幼い頃から愛しているのはソンジュただ一人だった事
e幼い頃からミラとユリに酷い虐めを受けていた事
e車に跳ねられた事
チスは事故前の記憶を取り戻して行く。

チョンソは過去の記憶が蘇り、自分がかけがえのないソンジュの事を忘れてしまっていた事を悔やみ泣き崩れる。
泣きながら、駆け出して河川敷に行き必死で、かつて投げ捨てた[愛の証]ペンダントを探し見つけ出した。

ソンジュは酔って服を着たまま、ホテルのシャワー室で、ずぶ濡れのまま繰り返し何度もチスとチョンソの名前を呼び続けていた。
そこへユリが駆け付けてソンジュを責める。

「ソンジュさん!!
私じゃ駄目なの!?」

ユリと認識出来ない程に酔ったソンジュを見てユリは泣きながら部屋を出て行った。

一方、チョルスは翌日の壁画披露式典に合わせて[天国の壁画]を完成させたがチスが記憶を取り戻した事は知らないでいた。
しかし記憶を失っても尚ソンジュに惹かれているチスをソンジュに返してあげようと決めていた。

深夜、ソンジュは天国の壁画の前に立ち[愛の証]のペンダントを握りしめながら呟いた。

「そろそろ君を天国に送り届けなきゃな。
最後の贈り物を受け取ってくれるね…」

壁画披露式典の当日。
チョンソは自分が本当はハン・ジョンソであり、ソンジュと愛し合っていた事を思い出した。
ンジュに会う為にグローバルランドに向かう。

チョンソはランド内の閉まるエレベーターに乗ろうとするミラを見つけるとエレベーターに乗り込んだ。

「あら久しぶりね。
早く会社を辞めてくれないかしら?」

ミラはチスを睨み付けて嫌味を言う。

「お母さん」

「えっ…!?
アンタ、どうかしちゃったの?
もう一度、言ってみなさい」

チョンソはミラに歩み寄る。

「私ですよ。
ハン・ジョンソンです。
覚えてないんですか!?」

「アンタ…!?」

チョンソは鋭い眼差しでミラを睨み付ける。

「おばさん!!」

ミラは思わず驚きの余り、昔のようにチョンソの頬を叩いてしまう。

「おばさん。
相変わらずなんですね」

チョンソはミラを睨むとエレベーターを後にした。

チョンソはソンジュを見つけて歩み寄る。
しかし、ソンジュの前に立ち尽くして言葉が出せぬまま壁画披露式典に向かうソンジュを見送りながら呟く。

「ソンジュ、お兄ちゃん…」

式典の後、チョルスはソンジュのオフィスを訪れる。
ソンジュは自分の思いをチョルスに告げる。

「許して下さい。
キム・ジスさんを好きになっていました。
貴方が居ると知っていながら、それでも好きでした。
許して下さい」

「申し訳ない…申し訳ない…」

チョルスはソンジュに謝る事しか言えない。
ソンジュはチョルスに感謝の気持ちを伝える。

「壁画、素晴らしかったです。
有難う」

「いいえ。
壁画を描いている間は幸せでしたから…。
俺も貴方にあげる物がある。
今晩12時にメリーゴーランドで待っています」

一方、全ての記憶を取り戻したチョンソは過去のソンジュとチョルスの言葉のTつTつを思い出し繋ぎ合わせていた。

「12時にメリ−ゴ−ランドで待ってる」

チョルスからチョンソにメ−ルが届いた。

ソンジュとチョンソは誰もいない遊園地で再会した…。

「僕に話があるんでしょ?
突然、僕を好きになってくれたとか?」

ソンジュがはにかむ。

「だとしたら?
受け取めてくれるんですか?」

ソンジュは天国の壁画を見ながら自分の気持ちを打ち明けた。

「今日チョンソにサヨナラした。
チョンソには許してくれ…って謝った。
他の人をいつしか好きになっていた…。
きっと、怒ってるだろうな。
僕、チスさんをチョンソだと思い込んでいた。
だって、そっくりだし。
余りにも会いたかった人だから。
でも、いつからかハン・ジョンソンじゃなくて、キム・ジスが好きになっていたんだ。
チョンソとは別の人だけど君の全てが好きなった。
君はとっても良い香りがする。
チョンソの香りだ。
次は君が話す番だよ…」

。チャ・ソンジュって人は、とっても失礼で頑固な人なのね。
だけど心の中では涙を流してる、とても誠実な人。
それから、何故か随分前から知ってた様な気がするの。
私が貴方の捜しているハン・ジョンソンだったら良いのに…。
段々、その人が羨ましいくて気になり始めたの。
そして今は、私がチョンソでありたい…」

「じゃあ、僕たちの思いは同じだ。
シンデレラになってみない?」

ソンジュは王子の衣裳
チョンソはシンデレラのドレスを着て電飾の輝く馬車のフロ−トとメリ−ゴ−ランドに乗った。

「本当にシンデレラになったみたい。
約束の時間が来たら戻らなきゃ…」

「でも後で王子がちゃんと迎えに来るだろ?」

「直ぐに迎えに来てくれるの?」

「靴を片方、置いて行くのを忘れるなよ。
メリ−ゴ−ランドに乗って、この絵を見て欲しかった。
これを見ながら皆が幸せになる様に…
皆が幸せならチョンソも幸せだろう。
チョンソは天国にいるから。
チョンソは、あの壁画にいるんだ。
あの壁画がチョンソなんだ」

メリ−ゴ−ランドが止まるとソンジュはチョンソのオデコにそっとキスをする。

「幸せなのに別れて行くんだね…・
お互い違う道へ…
ここへ僕を呼んだのはハン・チョルスさんだよ。
あの人、愛してるの?」

「ハン・ユリさんの事
愛してるの…?」

2人は互いに聞き合った…。




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